江戸の粋を次世代へ。日本サクラソウの歴史と、失敗しない「植え替え」の作法

2026年



メールマガジン「お花大好き!」
第1129号 2026年2月12日

江戸の粋を次世代へ。日本サクラソウの歴史と、失敗しない「植え替え」の作法

日本が誇る至宝、サクラソウの歴史と品格

皆様、こんにちは。

暦の上では春とはいえ、まだ風に冷たさが残るこの時期、私たちが心待ちにするのが「日本サクラソウ」の芽吹きです。

サクラソウは、分類上はサクラソウ科サクラソウ属、つまり世界中に広く分布する「プリムラ」の仲間です。

しかし、西洋のプリムラが原色に近い鮮やかな色合いを持つのに対し、日本サクラソウは、どこか慎ましやかでいて凛とした、独特の風情を備えています。

その歴史は古く、江戸時代にはすでに武士や町人の間で熱狂的なブームを巻き起こしていました。

当時の愛好家たちは、荒川の河川敷などに自生していた野生種から、変化に富んだ色や形の個体を選び出し、現在に続く数百もの「園芸品種」を確立したのです。

1つの野生種からこれほど多様な園芸品種を育て上げたのは、世界的に見ても稀有な、日本が誇るべき園芸文化といえるでしょう。

現代を彩る主な品種たち

現在、私たちが手に取ることができる品種にも、それぞれ個性的な魅力があります。

南京小桜(なんきんこざくら)」:江戸時代から続く伝統的な品種の一つで、紅色の地に白い絞りが入る、非常に愛らしい姿が特徴的です。

富士の雪(ふじのゆき)」:その名の通り、真っ白で清楚な花を咲かせます。春の光の中で、雪のような白さが際立ちます。

駒止(こまどめ)」:淡い桃色の大きな花が特徴で、初心者の方でも育てやすく、庭に春の柔らかな雰囲気をもたらしてくれます。

これらの品種は、いずれも江戸時代の人々が大切に守り、伝えてきた「生きた文化財」でもあります。

日本サクラソウ、育生の基本

日本サクラソウを元気に育てるための基本は、その「自生地」すなわち河原の環境を再現することにあります。

日当たりと風通し:芽吹きから開花までは、太陽の光をたっぷりと当ててください。

ただし、花が終わって気温が上がる初夏からは、直射日光を避けた半日陰の涼しい場所へ移動させるのがコツです。

水の管理:極度の乾燥を嫌います。特にこれからの成長期は、土の表面が乾き始めたらたっぷりと与えてください。

「水で育てる」と言われるほど、水管理は重要です。

今がラストチャンス:植え替えの極意

さて、今号で最もお伝えしたいのが「植え替え」についてです。新芽が大きく動き出す直前の今こそが、植え替えの適期となります。

土の選定:通気性と保水性のバランスが重要です。赤玉土、鹿沼土、腐葉土を混ぜたものや、市販の山野草専用土が適しています。

根茎(わさび根)の確認:鉢から抜くと、太い「わさび根」が見えます。古い根や腐った部分は丁寧に取り除きます。

植え付けの深さ:ここが重要です。新芽が土の表面から1-2cmほど隠れる程度の深さに植えます。浅すぎると乾燥して芽が傷み、深すぎると芽出しが遅れてしまいます。

芽の向き:サクラソウは横に這うように伸びる性質があります。芽の伸びる方向に余裕を持たせて配置してあげましょう。

編集後記:動き出した芽に贈る「芽出し肥」

本文ではサクラソウの植え替えに触れましたが、庭を回ると、秋に植えた球根植物たちが一斉に土を割って顔を出しているのに驚かされます。

私はこの「土を割って芽を出した瞬間」を捉えて、通常の規定よりもさらに薄めた液肥を与えます。

これが「芽出し肥(めだしごえ)」です。

冬の厳しい寒さを自力で乗り越えた植物たちに、「さあ、ここからは私が応援するよ」とエールを送るような気持ちで行っています。

皆様も、小さな緑の角(つの)のような芽を見つけたら、ぜひ一滴の激励を贈ってみてください。

春本番の輝きが、きっと見違えるものになるはずです。













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発行日2026年(令和8年) 2月19日
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発行人並木順子
  
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