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その株、来年は咲きません ― 9月が適期の宿根草、掘る株と触らない株
「10年植えっぱなしのシャクヤク、葉ばかり茂って花が咲きません……」
「ギボウシの真ん中が枯れて、ドーナツのようになってしまいました……」
「株分けは春と秋、どちらが正しいのでしょうか……」
1.花が減るのは、肥料不足ではありません
宿根草は、地下で毎年あたらしい芽をつくり、古くなった部分を外へ外へと押し出しながら広がっていきます。何年もそのままにすると、株の内側で三つのことが起きます。
中心が空洞になります。活きているのは外周の若い芽だけで、真ん中は古い根や茎の名残で詰まっている。掘り上げると輪のような形をしていて、驚かれる方が多いところです。芽が過密になります。ひと芽あたりに回る養分が減るので、花は小さく、数も減ります。
土が疲れます。根が土の粒を食いつぶし、水も肥料も入っていかなくなります。 つまり、足りないのではなく詰まっているのです。ここに肥料を足すと、残った力が葉に回って、いっそう茂るばかりになります。「よく茂るのに咲かない」というお悩みの多くが、これです。 目安は3年から5年に一度。ギボウシやヘメロカリスは4~5年、シャクヤクはもっと長く動かさなくても平気ですが、いずれも花が減ってきたら合図と思ってください。
2.春に分ける株と、秋に分ける株
見分ける原則は、ひとつだけです。
花が終わって、これから休みに向かう株は秋。これから咲く株と、寒さに弱い株は春。 秋がよいのには理由があります。この時期は気温は下がるのに、地温はまだ高い。地上部が伸びずに、根だけが伸びる季節です。霜が降りるまでの2か月ほどで、分けた株はしっかり根を張り直すことができます。だから、来春の花に間に合うのです。 ただし、9月上旬はまだ早いと申し上げておきます。残暑のなかで掘り上げると、傷口から乾いて弱ります。本番は9月下旬から10月上旬。これからの2週間は、掘る株を決め、腐葉土と植え場所を用意する時間にあててください。3.掘る株 ― 秋が出番の顔ぶれ
シャクヤク 秋がほぼ唯一の適期です。9月下旬から10月。赤い芽を3~5個つけて分けます。そして深植えは厳禁。芽の頭が土の表面から2~3センチのところに来るように植えてください。「葉ばかりで咲かない」の最大の原因が、この深植えです。ギボウシ(ホスタ) 葉が傷んでくるころが分けどきです。地上部を切り詰めてから掘り、芽を2~3個ずつに。
ヘメロカリス 春秋どちらでも分けられます。花が終わった今は、株の姿が見やすくて作業しやすい時期です。
ジャーマンアイリス こちらは逆に浅植えが鉄則。根茎の背中が土から見える程度に植えます。深いと咲きません。
シバザクラ 9~10月。分けた株はよく根づきます。
宿根フロックス、ベロニカ、アスチルベ、ルドベキア、ヒューケラ いずれも秋に分けられます。
クリスマスローズ 同じ秋でも10月に入ってから。9月中はまだ暑すぎます。分けられるのは無茎種で、有茎種は株分けに向きません。 共通するのは、来春から初夏に咲く花だという点です。いま分けておけば、咲くころには根が完成しています。
4.触らない株 ― 掘ると失敗する顔ぶれ
いま咲いている株、これから咲く株 シュウメイギク、ホトトギス、クジャクアスター、アメジストセージ、ダンギク、ツワブキ。まさに見せ場を迎える顔ぶれです。ここで掘れば、今年の花を自分で捨てることになります。分けるなら、花が終わって春の芽出しを待ってから。 移植そのものを嫌う株 前号のシュウメイギクがまさにこれで、地下茎を切られると勢いを落とします。オダマキ、ルピナス、ジギタリスも、まっすぐ下りる根を切られると弱ります。これらは分けるのではなく、種で更新する植物だとお考えください。 暖かい土地の草、寒さに弱い株 ススキ、パンパスグラス、ミューレンベルギアなどのグラス類です。秋に分けると、根が張り切らないうちに冬が来ます。適期は春の芽出し前(3~4月)。 木になるもの ラベンダー、ローズマリー、木立ち性のサルビア。株元が木質化する植物は、裂いても新しい根が出ません。更新は株分けではなく挿し木です。 植えて1~2年の若い株 分けるだけの芽の数がまだありません。3年目からとお考えください。5.分け方 ― 六つの手順
1.前日に水をたっぷりやります。乾いた土のまま掘ると、根が土ごとちぎれます。2.地上部を3分の1から半分に切り詰めます。根が減るぶん、葉も減らして釣り合いをとります。
3.株張りのひと回り外側にスコップを垂直に入れ、ぐるりと一周してから起こします。いきなり株の際に刃を入れると、いちばん活きのよい芽を切ってしまいます。
4.土を落として、芽の位置を確かめます。手で裂けるものは手で。硬い株はよく切れる刃物で、芽を割らないように。刃物は消毒してから使ってください。
5.ひと株に芽を3~5個残します。ここが分かれ目です。欲を出して小さく分けると、翌年は葉が出るだけで終わります。中心の古く硬い部分は、思いきって捨ててください。
6.腐葉土を混ぜた土に、元と同じ深さで植えます。シャクヤクとアイリスだけは前述のとおり浅く。植えたらたっぷり水をやり、活着するまで乾かさないこと。 肥料は2~3週間おいてから、薄いものを少しだけ。分けた直後は根が傷口だらけです。そこに肥料が当たると、かえって傷みます。作業は曇りの日か夕方に。掘り上げた株を、残暑の日ざしのなかに放置しないでください。
6.翌年咲かない、三つの理由
小さく分けすぎた。いちばん多い失敗です。3~5芽を守れば、たいてい翌年から咲きます。深く植えた。シャクヤクとジャーマンアイリスに集中します。葉は元気なのに咲かないときは、まず植え深さを疑ってください。
直後に肥料をやった。元気づけるつもりが逆効果になります。 なお、分けた株がその年ひと休みするのは珍しくありません。本調子になるのは2年目から。植えて放っておいた大株より、分けて若返った株のほうが、3年後には確実に花数で上回ります。
■まとめ
宿根草の株分け、要点をまとめます。
1.花が減るのは肥料不足ではなく、株の中心が詰まっているから。3~5年に一度が目安2.来春から初夏に咲く株は秋に分ける。これから咲く株と寒さに弱い株は春
3.本番は9月下旬から10月上旬。上旬のいまは、掘る株を決めて土を用意する時間
4.ひと株に芽を3~5個。小さく分けすぎない。シャクヤクは浅植え
5.シュウメイギクやススキ、ラベンダーは、この秋は触らない 掘るか、掘らないか。秋のこの判断ひとつで、来年の庭はずいぶん変わります。まずは花が減ってきた株を、一株だけ選ぶところから始めてみてください。
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| メールマガジン「お花大好き」 第1158号 | |
| 発行日 | 2026年(令和8年) 9月10日 |
| 発行元 | ガーデニングの裏技 |
| 発行人 | 並木順子 |
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