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9月に咲かないのは、8月に何もしなかったから ― お盆明けの庭リセット5工程
「夏の花が伸びきって、下葉は黄色。もう見るかげもありません……」
「水はやっているのに、鉢の表面を流れるだけで中まで届いていない気がする……」
「まだ暑いのだから、涼しくなるまで待つしかないと思っているのですが……」
工程1.点検 ― 戻る株と、戻らない株を見分ける
いきなりはさみを持たないでください。まず見分けるところからです。ここを飛ばすと、まだ生きている株を捨て、もう戻らない株に肥料と手間をつぎこむことになります。
枝を見ます。細い枝を指で軽く曲げて、しなやかに曲がれば生きています。乾いた音を立てて折れるようなら、その枝はもう水を上げていません。太い枝は、爪や小刀で表皮をほんの少し削ってみてください。下から緑がのぞけば、その先は生きています。 株元を見ます。上のほうが茶色く枯れていても、株元や地際に小さな新芽やわき芽が控えていれば、その株はほぼ確実に立ち上がってきます。夏の草花は、上を枯らして株元で耐えているものが少なくありません。見た目の惨状で判断しないことです。 鉢の重さを見ます。水やりの直後なのに鉢が軽い、水が数秒で流れ出てしまう。これは根が減っているか、土が乾ききって水をはじいている合図です。どちらなのかは、工程3で見分けます。 そのうえで、戻らないと判断した株は、思い切って片づけてしまいましょう。夏に空いた場所は、秋の苗を植えるための場所になります。庭を減らすことは、後退ではありません。工程2.切り戻し ― 下げるほど、秋に立ち上がります
伸びきった夏の草花は、先端にしか花をつけず、株元は蒸れて葉を落としています。ここで切り戻しです。この時期の切り戻しは、見た目を整えるためではなく、秋の花芽をつくらせるために行います。
どこまで下げるか。ペチュニア、カリブラコア、日々草、サルビア、ベゴニアなど夏の一年草は、全体の3分の1から2分の1ほどまで下げて構いません。「そんなに切って大丈夫かしら」と思うくらいでちょうどよいのです。中途半端に先端だけを摘むと、また先端だけが伸びて、株元の蒸れは直りません。 切る位置に決まりがあります。節(葉のつけ根)のすぐ上で切ります。そして、葉を何枚か必ず残すこと。緑の葉が一枚もない丸坊主にしてしまうと、光合成ができず、そのまま枯れることがあります。株元近くに小さな葉やわき芽が見えていれば、その少し上が切りどきです。 宿根草は、傷んだ葉を地際から抜き取るように整理します。株の中心に風が通るようになれば、それだけで見違えます。 そしてバラです。秋バラを咲かせるための夏剪定は、暖地でおおむね9月上旬、寒冷地で8月下旬が適期。開花までおよそ50日と見て逆算します。いまはまだ、その手前です。早く切りすぎると秋の開花がずれてしまいますので、この段階では黒くなった葉を取り除き、細い枝や内向きの枝を整理する程度にとどめ、本番は適期を待ってください。 なお、切り戻しは朝か夕方の涼しい時間に。切った直後の株は水を吸う力が落ちていますので、数日は西日を避けられる場所に置けると安心です。工程3.土と根 ― 水が「素通り」する鉢を直します
真夏を越した鉢でいちばん多いのが、水が土に入っていかないという状態です。水やりのたびに、鉢の縁と土のすきまを通ってすーっと流れ出る。受け皿には水がたまるのに、土の中はからから。これでは、いくら水をやっても意味がありません。
原因は二つ。ひとつは、土が完全に乾いて水をはじくようになっていること。ピートモスを多く含む培養土は、一度乾ききると水を受けつけなくなります。もうひとつは根詰まりで、鉢の中が根でいっぱいになり、水の通り道だけができてしまっている場合です。 どちらにも効く手当てが底面吸水です。バケツやたらいに水をため、鉢ごと静かに沈めます。気泡が出なくなるまで、20分ほど。土が芯まで水を含み直します。乾かしすぎた鉢は、この一手で見違えることがあります。 土が減って根が見えている鉢には、新しい土を足しておきます。そのうえで、株元をバークチップやワラで覆うマルチングを。地温の上昇と乾燥をやわらげ、あとで述べる病気の予防にもなります。 ここで大事なご注意を。この時期に、根を崩す植え替えはしないでください。夏バテした株の根を切れば、水を吸えずにそのまま枯れます。どうしても手狭なら、根鉢を崩さずひとまわり大きな鉢に移す鉢増しまでにとどめ、本格的な植え替えは9月の中下旬以降に。 花壇のほうは、雨と水やりで固く締まった表土を、移植ごてで軽くほぐす程度で十分です。深く耕すと、浅いところを走る根を切ってしまいます。工程4.追肥 ― 秋の花の燃料は、いま入れます
工程2で切り戻した株は、これから新しい枝と葉を伸ばし、そこに花芽をつけます。その材料になるのが肥料です。つぼみが見えてから慌てて施しても、まず間に合いません。9月に咲かせたいのなら、8月下旬が期限だとお考えください。
ただし、順番があります。弱っている株に、いきなり濃い肥料は禁物です。根が傷んでいるところへ肥料分が来ると、かえって水を吸えなくなり、とどめを刺すことになります。工程1で「弱っている」と判断した株には、まず活力剤やごく薄めた液肥から始め、新しい葉が動きだしたのを確かめてから通常の施肥に移ります。 元気を保っている株には、緩効性の固形肥料を規定量。液肥を使うなら、規定より薄めて、回数を増やすのがこの季節の要領です。濃い肥料を一度にやるより、薄いものをこまめに与えるほうが、暑さの残る時期には安全に効きます。 そして、肥料は必ず水やりのあとに。乾いた土に施すと、肥料分の濃度が上がって根を傷めます。株元に直接触れさせず、少し離した位置に置くのも同じ理由です。 バラは、夏剪定に合わせて施すのが基本です。剪定と同時、あるいは少し前に緩効性肥料を株元に施しておくと、秋の枝がしっかり伸びます。工程5.病害虫 ― 秋に持ち越さないための、最後の一手
夏に増えた厄介ものを、そのまま秋へ持ち越さないことです。ここまでの4工程で株が元気を取り戻しはじめると、やわらかい新芽が次々に出てきます。それを狙う相手がいます。
ハダニ。高温と乾燥で爆発的に増えます。葉が白っぽくかすれて色があせ、ひどくなると葉裏に細かいクモの巣のようなものが見えます。いちばん効くのは、実は薬ではなく葉裏への水です。ハダニは水に弱いので、水やりのついでにホースの勢いで葉の裏を洗う習慣をつけてください。薬剤を使う場合は、同じ系統を続けて使わないこと。抵抗性がつき、効かなくなります。 うどんこ病と黒星病。涼しくなり、朝晩の気温差が出てくると再び動きだします。黒星病の菌は、雨や水やりで土から跳ね返って下葉に感染していきます。落ちた病葉を拾い集めること、そして工程3のマルチングが、そのまま予防になります。 コガネムシの幼虫。夏のあいだに成虫が鉢の土に産卵し、孵化した幼虫が秋から根を食べます。「水をやっているのに急にしおれる」「株を引くとぐらつく」鉢は、これを疑ってください。土の表面が妙にふかふかしているのも合図です。 ナメクジとヨトウムシも、これから出てくる柔らかい新芽を好みます。夜のうちに新芽だけがなくなっていたら、この二つです。 つまるところ、工程2で風通しをつくり、工程3で株元を覆い、葉裏に水をかける。特別な道具がなくても、この積み重ねが秋の被害をずいぶん減らしてくれます。■まとめ
お盆明けの庭リセット、5つの工程をまとめます。
1.まず点検。枝のしなり、表皮の緑、株元の新芽を見て、戻る株と戻らない株を分ける2.切り戻しは全体の3分の1から2分の1まで。節の上で切り、葉を残す。バラの夏剪定は適期を待つ
3.水が素通りする鉢は、バケツに沈めて気泡が止まるまで。増し土とマルチングで仕上げる
4.追肥の期限は8月下旬。弱った株は活力剤から、元気な株は規定量。必ず水やりのあとに
5.ハダニは葉裏への水、黒星病は落ち葉の掃除。秋に持ち越さない あなたの庭で、いま見るのがいちばんつらくなっている鉢はどれでしょうか。その一鉢から手をつけるのが、9月への近道です。
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| メールマガジン「お花大好き」 第1155号 | |
| 発行日 | 2026年(令和8年) 8月20日 |
| 発行元 | ガーデニングの裏技 |
| 発行人 | 並木順子 |
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