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残暑の庭が、ひと晩で秋になる ― 植えっぱなしで咲くシュウメイギク
「9月に入っても暑いばかりで、庭に咲いている花がありません……」
「シュウメイギクを植えたのに、夏に葉が枯れ込んで消えてしまいました……」
「毎年つぼみは上がるのに、花のころには倒れてしまいます……」
1.キクではありません
名前に「菊」とありますが、シュウメイギクはキク科ではなく、キンポウゲ科アネモネ属の植物です。春に咲くアネモネの仲間、と申し上げたほうが早いかもしれません。花びらに見える部分は、正確には花びらではなく萼片です。
もともとは中国原産で、古い時代に日本へ渡り、各地で野生化しました。京都の貴船あたりに多く見られたことから、貴船菊(キブネギク)とも呼ばれます。園芸店で「シュウメイギク」として並ぶものには、この在来的な系統のほか、近縁種との交雑で生まれた品種群も含まれています。 花期は9月から10月。品種によっては8月下旬から咲き始め、11月まで咲き継ぐものもあります。まさに、夏の花が終わり、秋バラが上がるまでのあいだを埋める時期です。2.どれを選ぶか
品種は大きく三つの姿に分かれます。庭のどこに置きたいかで選んでください。
一重の白 もっとも野趣があり、和の庭にも洋の庭にもなじみます。草丈は高めで、風に揺れる姿が身上です。一重・八重のピンク 貴船菊系の濃い紅紫から、淡い桃色まで。八重は花もちがよく、一株でも見ごたえがあります。
矮性の品種 草丈50センチ前後で収まり、倒れにくい。鉢植えや花壇の前列、通路ぎわに向きます。 背の高い系統は、条件がよいと1メートルを超えます。「毎年倒れる」というお悩みの多くは、置き場所と草丈が合っていないことが原因です。狭い場所や鉢で楽しむなら、はじめから矮性種を選ぶほうが確実です。 なお、開花株が出回るのはまさに今の時期です。花色と草丈を自分の目で確かめて買えるという点で、秋は買いどきと言えます。
3.植える場所が、すべてを決めます
シュウメイギクの成否は、ほぼ植え場所で決まります。丈夫な植物ですが、苦手なものがはっきりしています。
午前中に日が当たり、午後は日陰になる場所が理想です。一日中の日なたでも咲きますが、夏の西日と乾燥で葉を傷めます。逆に暗すぎる日陰では、花つきが落ち、茎ばかりが伸びて倒れます。落葉樹の株元、建物の東側、バラの足元。このあたりが得意な場所です。 もっとも嫌うのは乾燥です。「夏に葉が枯れて消えた」というお話は、たいていこれです。葉の縁が茶色く縮れてきたら、水が足りていない合図と思ってください。植えつけのときに腐葉土をたっぷり混ぜ、株元を腐葉土やバークで覆っておくと、夏の乾きがずいぶん違います。 植えつけの適期は、春(3月から4月)と秋(9月から10月)です。今なら、涼しくなってきた9月中旬以降が落ち着きます。開花中の株を買った場合は、鉢のまま花を楽しみ、花が終わってから植えつけるほうが安全です。 もう一点、大切なことを申し上げます。シュウメイギクは移植を嫌います。地下茎を切られると、そこから傷んで勢いを落とします。「毎年植え替えて世話をする」植物ではありません。最初に場所を決めたら、あとは動かさない。これが、大株に育てるいちばんの近道です。4.植えてからの手入れ ― ほとんど、することがありません
水やり。庭植えなら、根づいてしまえば夏の日照りのときだけで十分です。鉢植えは乾きが早いので、夏は朝にたっぷりと。乾燥を嫌う植物なので、水切れだけは避けてください。 肥料。春の芽出しのころと、花が終わったあとに、緩効性の肥料を株元に少量。それ以上は要りません。与えすぎると茎ばかり伸びて、いっそう倒れやすくなります。 支え。背の高い品種は、つぼみが上がる前に支柱を立てておきます。咲いてから立てるのでは遅い。周囲に低い植物を寄せて植え、互いに支え合わせるのも自然な方法です。 花がら。咲き終わった花は摘み取ると、次のつぼみに力が回ります。株全体が咲き終わったら、花茎を株元で切ります。冬には地上部が枯れますが、根は生きています。枯れたからと掘り返さないでください。春にまた芽が出ます。 殖やし方。地下茎で自然に広がるので、放っておいても年々株数が増えます。意識的に殖やすなら、早春の株分けか、冬のあいだの根伏せ(太い根を数センチに切り、浅く伏せて土をかける)が確実です。逆に、広がりすぎて困る場所では、根止めの板を土中に入れておくと安心です。5.困ったときの見分け方
夏に下葉から枯れ上がる 乾燥です。まず水、それから株元のマルチング。西日が当たるなら、遮光か植え場所の再検討を。白い粉をふいたようになる うどんこ病です。風通しの悪い場所と、窒素の与えすぎで出ます。傷んだ葉を取り、薬剤で予防します。
新芽やつぼみに虫がつく アブラムシです。花の時期にはヨトウムシが夜に葉を食べることもあります。
咲かない 日照不足か、植えて日が浅いかのどちらかです。植えた翌年はまだ花数が少なく、本気を出すのは3年目からと思ってお待ちください。
6.バラの足元に
シュウメイギクは、バラとの相性がとてもよい宿根草です。理由は三つあります。
ひとつ、咲く時期が重なること。夏剪定を終えたバラが秋の花を上げるころ、シュウメイギクは盛りを迎えます。ふたつ、好む条件が近いこと。腐葉土の効いた、乾かしすぎない土。みっつ、姿が邪魔をしないこと。細い茎の先にまばらに咲くので、バラの株元を隠さず、風景に奥行きだけを足してくれます。 バラの株元は、夏には葉が減って土が見えがちな場所です。そこに秋、白い花が浮かぶ。前号でお伝えした夏剪定の効果を、いちばん美しく見せてくれる組み合わせだと思います。■まとめ
シュウメイギク、要点をまとめます。
1.キク科ではなくアネモネの仲間。花期は9月から10月で、庭がいちばん寂しい時期を埋める2.狭い場所や鉢なら矮性種を。倒れる原因の多くは、草丈と置き場所のずれ
3.午前中だけ日が当たる場所へ。西日と乾燥が最大の敵
4.移植を嫌うので、場所を決めたら動かさない。植えっぱなしで年々大株に
5.冬に地上部が枯れても掘り返さない。本気を出すのは3年目から 秋バラを待つあいだの庭に、白い花がひとつ揺れているかどうか。その差は、思いのほか大きいものです。今年の秋、株元にひと株、いかがでしょうか。
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書名:バラに合う植物: 一年中美しい庭をつくる、脇役の設計図
著者:並木順子
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| メールマガジン「お花大好き」 第1157号 | |
| 発行日 | 2026年(令和8年) 9月3日 |
| 発行元 | ガーデニングの裏技 |
| 発行人 | 並木順子 |
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