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潮風にも夏の暑さにも負けない野生のバラ ― ハマナス(ジャパニーズローズ)の魅力と育て方
「バラは憧れだけど、消毒や手入れが大変そう……」
「夏の暑さや潮風で、うちの環境ではとても無理だろう……」
「できれば、農薬をまかずに気軽にバラを楽しみたい……」
その1.概要 ― 海辺で鍛えられた、たくましいバラ
ハマナスは、日本の北海道から本州、東アジアの海岸沿いに自生するバラ科バラ属の落葉低木です。浜辺の砂地という、塩分が多く、乾燥しやすく、風の強い過酷な環境で育つため、生まれつき非常にたくましい性質をもっています。
学名の rugosa は「しわのある」という意味。葉の表面に深いしわが刻まれているのが特徴で、この厚みのある葉が乾燥や潮風から身を守っています。初夏、直径6-8cmほどの紅紫色の花を咲かせ、強く甘い香りをあたりに漂わせます。花のあとには、真っ赤で丸い大きな実(ローズヒップ)をつけ、秋の庭を彩ります。 名前の由来は「浜に咲く梨(なし)」から。赤い実を梨に見立てたという説が有力で、本来は「はまなし」が「はまなす」に転じたと言われています。その2.世界に渡った日本のバラ ― ハイブリッド・ルゴーサの誕生
ハマナスが園芸の世界で大きく花開いたのは、19世紀に欧米へと渡ってからです。当時の育種家たちは、ハマナスがもつ耐寒性・耐病性・強い香り、そして美しいローズヒップに強く惹かれました。
そこで、ハマナスを交配親に使い、四季咲き性や華やかな花色をもつバラと掛け合わせて生まれたのが、ハイブリッド・ルゴーサと呼ばれる品種群です。1892年に作出された名花「ブラン・ドゥーブル・ド・クベール」をはじめ、丈夫で香り高く、手のかからないバラとして、寒冷地や海辺の庭で今も愛され続けています。 つまりハマナスは、日本の海辺で鍛えられた野生の血が、世界のバラ育種を支えてきた、隠れた立役者でもあるのです。その3.主な品種
ひとくちにハマナスの仲間といっても、原種から華やかな園芸品種までさまざまです。手に入りやすく、育てやすい代表的なものをご紹介します。
原種ハマナス(ローザ・ルゴーサ)
まずは基本となる原種。紅紫色の一重咲きと、清楚な白花(アルバ)があります。とにかく丈夫で、無農薬でもよく育ち、秋には見事なローズヒップがつきます。野趣あふれる自然な雰囲気を楽しみたい方に。
フラウ・ダグマー・ハストラップ
淡いピンクの一重咲きで、上品な香りをもつ名品。花つき・実つきともによく、こんもりとまとまるので、生け垣にも花壇の主役にも向きます。ルゴーサ系の入門におすすめです。
ハンザ/ロズレ・ド・ライ
濃い赤紫の八重咲きで、強い香りが魅力。「ハンザ」は花もちがよく実もつき、「ロズレ・ド・ライ」は返り咲き性があり、秋まで長く花を楽しめます。華やかさを求める方に。
ブラン・ドゥーブル・ド・クベール
純白の半八重咲きで、清らかな香りをもつ古典的名花。白いバラの中でも育てやすく、ホワイトガーデンの主役にもなります。
その4.育て方の基本 ― 手がかからないのが最大の魅力
置き場所と用土
日当たりと風通しのよい場所を好みます。もともと砂地の植物なので、水はけのよい土が最適です。やせ地でもよく育つほど丈夫で、土質はあまり選びません。地植えにすれば、根がしっかり張って手間いらずになります。
水やりと肥料
乾燥に強いので、地植えならほとんど降雨まかせで十分。真夏に土がすっかり乾くようなら、朝か夕方にたっぷり与えます。肥料は控えめでよく、冬の寒肥と花後のお礼肥え程度で、じゅうぶんに育ちます。与えすぎはかえって枝ばかり茂らせるので注意しましょう。
剪定と殖え方
強い剪定は必要ありません。冬に、混み合った枝や古い枝を間引く程度でじゅうぶんです。
ハマナスは地下茎(シュート)を伸ばして横に広がって殖えるのが特徴です。放っておくと大株になるので、広げたくない場所では、地中に仕切り板を入れるか、株分けで整理しましょう。ふえた株は、掘り上げて植え直せば簡単にふやせます。
病害虫 ― 無農薬でもいける強さ
ハマナスの最大の魅力は、なんといっても病害虫に強いこと。バラの大敵である黒星病やうどんこ病にもかかりにくく、農薬にたよらずに育てられます。ただし、まったく無縁というわけではないので、風通しをよくし、落ち葉をこまめに片づけておくと、より安心です。
その5.秋の楽しみ ― ローズヒップを味わう
ハマナスの魅力は花だけではありません。花のあとにつく真っ赤なローズヒップは、大きくて見ごたえがあり、秋の庭を鮮やかに彩ります。
このローズヒップはビタミンCが豊富で、昔から食用にも利用されてきました。よく熟した実を収穫し、種を取り除いて、ジャムやローズヒップティーにすると、ほんのりすっぱくて滋味豊か。花は花で、香りを生かしてポプリや花びらのジャムにもできます。観賞して、香りを楽しんで、最後は味わう。ハマナスは、一年を通して庭の恵みを届けてくれる、働き者のバラなのです。
その6.花言葉 ― 「照り映える容色」
ハマナスの花言葉は、「照り映える容色」「香り豊か」「見映えのよさ」「あなたの魅力に酔う」など。
海辺の強い日ざしの中で、あざやかに咲きほこる姿と、あたりに漂う豊かな香り。過酷な環境にありながら、少しも見劣りせず、堂々と美しく咲く。そんなハマナスらしさが、そのまま花言葉になったようです。◆まとめ
日本生まれの野生のバラ、ハマナス。その魅力をあらためて4つにまとめます。
1.海辺育ちで非常にたくましく、暑さ・寒さ・潮風・やせ地に強い2.黒星病やうどんこ病に強く、無農薬でも育てられる手軽さ
3.原種から華やかなハイブリッド・ルゴーサまで、品種も香りも豊富
4.初夏の花、秋のローズヒップと、一年を通して楽しめる 「バラは手がかかるから」とためらっていた方こそ、まずはこの丈夫な野生のバラから始めてみてはいかがでしょう。きっと、バラのある暮らしがぐっと身近になるはずです。
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| メールマガジン「お花大好き」 第1148号 | |
| 発行日 | 2026年(令和8年) 7月2日 |
| 発行者 | ガーデニングの雑学 |
| 発行人 | 並木順子 |
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