一日花の宝石、ヘメロカリス 暑さに負けず、夏じゅう咲き継ぐ宿根草

2026年




メールマガジン「お花大好き!」
第1147号 2026年6月25日


一日花の宝石、ヘメロカリス 暑さに負けず、夏じゅう咲き継ぐ宿根草

「梅雨が明けたら、いよいよ庭は夏本番。でも何を植えれば……」
「猛暑でも水やりに追われず、長く咲いてくれる花はないだろうか……」
「丈夫で、植えっぱなしで毎年咲く宿根草がほしい……」

そんな声にぴったりの花が、ヘメロカリスです。英名はデイリリー。一輪は朝に開いて夕方にはしぼむ「一日花」ですが、はかないのは一輪だけ。一株から次々と花茎が立ち、初夏から夏じゅう、品種によっては秋まで咲き継ぎます。

前号までご紹介してきたエキナセアやガウラと同じく、暑さにめっぽう強い宿根草。今回は、この一日花の宝石・ヘメロカリスを、概要から品種改良の歴史、流通品種、育て方、そして花言葉まで、たっぷりご紹介します。

■1.概要 ― 一日花なのに、夏じゅう咲き継ぐ

ヘメロカリスは、ツルボラン科(旧ユリ科)ワスレグサ属の宿根草です。学名 Hemerocallis は、ギリシャ語の「ヘメラ(一日)」と「カロス(美)」を合わせた言葉。まさに”一日の美”を表しています。

一輪の花は、朝に開いて夕方にはしぼむ「一日花」。英名のデイリリー(Daylily=一日のユリ)も、ここから来ています。けれども、しぼむのは一輪だけ。一株からは次々と花茎が立ち、つぼみが順番に開いていくため、初夏から長い期間、花を楽しめます。四季咲き性の品種なら、夏を越えて秋まで咲き継ぐものもあります。

東アジア原産で、暑さ・寒さ・乾燥に強く、やせ地でもよく育つ強健さが身上です。一度植えれば植えっぱなしで毎年咲いてくれる、温暖化時代に頼れる花。和名はワスレグサ(忘れ草)といいます。

■2.品種改良の歴史 ― アメリカで花開いた”一日の美”

ヘメロカリスの原産地は東アジアです。中国では古くから、若いつぼみを食用にしたり薬用にしたりと、暮らしに根ざした植物として栽培されてきました。

それが16世紀後半にヨーロッパへと渡ります。19世紀から20世紀にかけては、イギリスのジョージ・イエルドやエイモス・ペリーといった育種家が品種改良に取り組み、観賞用としての歩みが始まりました。

ヘメロカリスが大きく花開いたのは、アメリカに渡ってからです。アーロー・B・スタウト博士がヘメロカリスの分類と育種を体系的に進め、1934年には、いまも”バイブル”と呼ばれる名著『DAYLILIES』を出版しました。彼は近代育種の父と称されています。

以降、アメリカの愛好家たちによって品種改良は爆発的に進みます。当初は黄色や橙色が中心だった花色は、赤・ピンク・紫・複色・覆輪へと一気に広がりました。倍数体育種によって花は大輪に、株はいっそう丈夫に。さらに、春から秋まで繰り返し咲く「四季咲き性(リブルーミング)」の品種が登場し、観賞できる期間は飛躍的に延びました。いまや世界で登録される品種は数万にのぼり、毎年のように新品種が発表されています。

■3.現在流通している品種

ひとくちにヘメロカリスといっても、花色も花形も実に多彩です。園芸店やネット通販で手に入りやすい代表的なタイプをご紹介します。

定番中の定番 ― ステラ・デ・オロ

まず一株、という方におすすめなのが‘ステラ・デ・オロ’。径8cmほどの黄色い花を、四季咲き性で、冷涼地では秋まで次々と咲かせます。草丈が低くコンパクトにまとまるので、花壇の縁取りや鉢植え、グラウンドカバーにも最適。世界中で愛される、ヘメロカリス入門の決定版です。

豪華な大輪系

赤・ピンク・紫・覆輪(花弁のふちに別の色が入るもの)など、見ごたえのある大輪品種も豊富です。一輪が手のひらほどになるものもあり、夏花壇の主役を張れる華やかさがあります。

個性的な花形

花弁が細く伸びてクモの脚のように見えるスパイダー咲きや、花弁が幾重にも重なる八重(ダブル)咲きなど、花形のバリエーションも楽しめます。コレクション性が高く、集めたくなる魅力があります。

香りのある品種・夕方咲き品種

黄色系を中心に、ほのかな芳香を放つ品種があります。また、夕方から咲き出すタイプもあり、仕事帰りや夕涼みの時間に庭を彩ってくれます。香りと咲く時間で選ぶのも、通好みの楽しみ方です。

■4.育て方の基本(つぼみのアブラムシに注意)

置き場所と用土

日なたから半日陰でよく育ちますが、日当たりがよいほど花数が増えます。土質はほとんど選びませんが、水はけと適度な保水のある土が理想です。植え付けは春か秋が適期。株間をとって植えましょう。

水やりと肥料

乾燥に強いので、地植えならほぼ降雨まかせで十分。鉢植えは、表土が乾いたらたっぷりと与えます。肥料は、芽出しの春と開花前に与えると花つきがよくなります。やせ地でも育つため、与えすぎは禁物です。

花がら摘みと株分け

花は一日でしぼむので、終わった花を摘み取ると株がすっきりと保てます。花茎は、すべて咲き終えたら根元から切りましょう。
数年たつと大株になり、込み合うと花つきが落ちてきます。春か秋に掘り上げて株分けすれば、若返って再び元気に咲きます。

弱点はつぼみのアブラムシ

ヘメロカリスはとても丈夫で、病害虫の少ない植物です。ただし一点だけ注意したいのが、花芽(つぼみ)にアブラムシがつきやすいこと。放っておくとつぼみが変形し、開花不良の原因になります。見つけ次第、手で取る・水流で洗い流す・薬剤を散布するなど、早めの対処を心がけてください。このほか、ハダニや、まれにさび病が出ることもあります。

冬越し

寒さには強く、関東以西なら戸外で問題なく冬を越します。冬は地上部が枯れますが、春には株元から新芽が吹いてきます。寒冷地では、株元を腐葉土などで軽くマルチングしておくと安心です。

■5.花言葉 ― 「憂いを忘れる」花

ヘメロカリスの花言葉は、「宣言」「一夜の恋」「愛の忘却」「憂いを忘れる」「苦しみからの解放」など。

「一夜の恋」は、一日で咲き終える花のはかなさにちなんだもの。そして「憂いを忘れる」は、和名のワスレグサ(忘れ草)に由来します。この花を身につけると、あるいはつぼみを食べると、いやなことや心配事を忘れてしまう――そんな古い言い伝えから来ているのです。

一日でしぼんでも、翌朝にはまた新しい花が開く。過ぎたことを引きずらず、毎朝あたらしく咲きなおすヘメロカリスの姿は、私たちに前を向く明るさを教えてくれるようです。

■まとめ

一日花の宝石、ヘメロカリス。その魅力をあらためて4つにまとめます。

1.一輪は一日花だが、次々と咲き継ぎ、初夏から夏(秋まで)長く楽しめる
2.東アジア原産。暑さ・寒さ・乾燥・やせ地に強く、植えっぱなしで毎年咲く
3.アメリカでの育種改良により、花色・花形は驚くほど多彩。まずはステラ・デ・オロから
4.病害虫は少ないが、つぼみのアブラムシだけは早めに対処を

猛暑の夏でも、水やりに追われず、たくましく咲き続けてくれるヘメロカリス。今週末あたり、近くの園芸店で開花株を探してみてはいかがでしょうか。きっと、夏の庭の頼もしい相棒になってくれるはずです。

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書名:バラに合う植物–一年中美しい庭をつくる、脇役の設計図
著者:並木順子
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発行日2026年(令和8年) 6月25日
発行元ガーデニングの裏技
発行人並木順子
  
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