暦の上では、もう秋 ― 秋の七草を庭で育てて、猛暑の先を楽しむ

2026年




メールマガジン「お花大好き」
第1153号 2026年8月6日


暦の上では、もう秋 ― 秋の七草を庭で育てて、猛暑の先を楽しむ

「まだ猛暑まっさかりなのに、暦の上ではもう秋だなんて……」
「秋の七草、名前は聞くけれど、七つ全部は言えない……」
「秋らしい草花を庭に迎えたいけれど、いまからでは遅いのでは……」

前号では、猛暑とゲリラ豪雨のなかで庭の花に明暗が分かれたようすをお届けしました。まだ暑さの真っただ中ですが、あすの8月7日は立秋。暦の上では、きょうが夏の最後の一日ということになります。暦は季節の少し先を教えてくれるもの。今号は思いきって先回りして、日本の秋を代表する秋の七草を取り上げます。七種を「庭で育てられるもの」と「庭には向かないもの」に仕分けしながら、いまから手を打って秋の庭に間に合わせる算段まで、ご案内していきます。

1.あすは立秋 ― 暦が先に秋を告げる

立秋は二十四節気の十三番目。太陽が黄経135度に達した日で、年によって8月7日か8日になります。2026年は8月7日です。

「こんなに暑いのに秋だなんて」と思われるでしょうが、節気は太陽の位置で決まるもの。いっぽう気温のほうは、地面や海に蓄えられた熱がじわじわと効いてくるため、ピークが遅れてやってきます。立秋の前後がいちばん暑いのは、そのためなのですね。

この日を境に、季節のあいさつも「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に変わります。暦はいつも、体感より少し先を告げるもの。秋の庭も同じで、暑いいまのうちに仕込んでおいた方にだけ間に合います。

2.秋の七草は「食べる」ではなく「眺める」

秋の七草の出典は、万葉集におさめられた山上憶良の二首です。まず短歌(1537番)で「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花」と数え、続く旋頭歌(1538番)で名を挙げます。

「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」

尾花とはススキの穂のこと。最後の「朝貌の花」はキキョウとする説が有力で、ほかにアサガオ、ムクゲ、ヒルガオを当てる説もあります。

春の七草が1月7日に七草粥にして食べるものであるのに対し、秋の七草に決まった行事はありません。秋の野の風情を、ただ眺めて楽しむ草花です。覚え方は頭文字をつないで「お・す・き・な・ふ・く・は」。オミナエシ、ススキ、キキョウ、ナデシコ、フジバカマ、クズ、ハギの順ですよ。

3.庭で育てられる五種と、その勘どころ

七種のうち五種は、家庭の庭や鉢で十分に楽しめます。

ハギ ― マメ科で、根粒菌の働きにより痩せた土でもよく育ちます。枝が伸びて枝垂れるので場所にゆとりを。冬から早春に地際で刈り込むと姿が整います
キキョウ ― 野生種は環境省のレッドリストで絶滅危惧II類ですが、出回っているのは園芸品種ですから、育てても野生の株を減らすことにはなりません。太い根をもち移植を嫌うので、植え替えは最小限に。矮性種は鉢向きです
ナデシコ ― 高温多湿の蒸れが苦手。夏に切り戻しておくと、秋にまた咲いてくれます
オミナエシ ― 日なたと風通しを好みます。適度な湿り気を好む草なので乾かしすぎは禁物、いっぽうで水はけが悪いと立枯病が出ます。草丈が高く倒れやすいので、摘心で低く仕立てるか支柱を
フジバカマ ― 在来種は準絶滅危惧。やや湿り気のある土を好みます。地下茎で横に広がるため、庭に直植えするより鉢植えが無難です

4.庭に招く前に考えたい二種 ― ススキとクズ

残る二種は、庭に入れる前にひと呼吸おきたい顔ぶれです。

ススキは、株が年々太って大株になり、こぼれ種でも周りに増えていきます。庭で楽しむなら、タカノハススキやイトススキといった園芸品種を7号以上の鉢で育てるのが安心。花のあとに穂を早めに切れば、種のこぼれも抑えられます。穂はお月見の飾りや切り花にも重宝しますよ。

クズのほうは、七草に数えられながら庭に植えるものではありません。つるはひと夏で数メートル伸び、地中の根は太く肥大して、刈っても除草剤をまいても根絶がむずかしい相手です。IUCNの「世界の侵略的外来種ワースト100」にも挙げられているほど。花は甘く香って美しいので、野に咲くものを眺めて楽しむのが正解です。

地下茎やつるで広がる草は鉢植えか根域制限で。そして花のあとに穂や種を残さない。これが七草とつきあう原則です。

5.いまから間に合わせる算段 ― 8月の苗選びと真夏の扱い

「秋の草花は、いまからではもう遅い」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。8月から9月にかけて、つぼみ付きの苗や開花株のポット苗が園芸店やホームセンターに並びます。開花株を選べば、今年の秋にきちんと間に合います。

苗を選ぶ目安は、徒長していないこと、下葉が枯れていないこと、根が回りすぎていないこと、そしてつぼみが多いこと。

ただし真夏に地植えするのは避けてください。根鉢を崩さずに一回り大きな鉢へ鉢増しし、涼しくなる9月中旬から下旬に定植します。置き場所は、午前中に日が当たり午後は日陰になるところが理想。鉢はコンクリートに直置きせず、すのこや台の上へ上げておくと、照り返しと鉢の中の高温をかわせます。

なお、フジバカマの仲間には、秋に南へ渡るチョウアサギマダラが蜜を吸いに訪れることがあります。飛来は9月下旬から10月中下旬ごろ。とくにオスが、性フェロモンのもとになる成分を求めて集まるといわれます。必ず来るとはかぎりませんが、待つ楽しみがひとつ増えますね。

■まとめ

暦を先取りして秋の庭を用意するこつを、5つにまとめます。

1.あすは立秋。暑さの底で暦は先に秋へ動き、あいさつも残暑見舞いに変わる
2.秋の七草の出典は万葉集の山上憶良。春の七草と違い、食べずに眺める草花
3.庭向きはハギ、キキョウ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマの五種
4.ススキは大株になり、クズは庭向きでない。広がる草は鉢植えか根域制限で
5.真夏は植えつけず鉢増しで。つぼみ付きの苗をいま確保すれば秋に間に合う

暦が秋を告げるきょう、あなたの庭には、どの七草を迎えてみたいですか。

新刊案内

暦が秋へ動いても、庭の暑さはまだしばらく続きます。秋の草花を無事に迎えるためにも、猛暑を植物と一緒に乗り切る一冊をどうぞ。夏越しのコツをまとめました。

書名:園芸植物と共に夏を生きる ― ガーデナーのための夏越しテクニック
著者:並木順子
フォーマット:Kindle電子書籍

Kindle Unlimitedで追加料金なしで読めます。
Amazonでのお買い求め・お試し読みは、下記のリンクからどうぞ。

園芸植物と共に夏を生きる ― ガーデナーのための夏越しテクニック(Amazonで見る)














メールマガジン「お花大好き」 第1153号
 
発行日2026年(令和8年) 8月6日
発行元ガーデニングの雑学
発行人中野純子
  
バックアップサイト過去記事はこちら
 

メルマガ詳細

園芸植物と共に夏を生きる - ガーデナーのための夏越しテクニック

関連記事

特集記事

最近の記事

  1. 暦の上では、もう秋 ― 秋の七草を庭で育てて、猛暑の先を楽しむ

  2. お花の写真のカレンダー2026年8月号

  3. この猛暑とゲリラ豪雨、庭で明暗が分かれた ― 咲き続ける花と、夏バテした花

TOP