気温が下がらないと、秋バラは傷みます ― 10月の高温と蒸れから、二番花と黒星病を守る

2026年




メールマガジン「お花大好き」
第1164号 2026年10月22日


気温が下がらないと、秋バラは傷みます ― 10月の高温と蒸れから、二番花と黒星病を守る

「咲いたと思ったら、二日で開ききってしまいました……」
「下の葉に黒い点が出て、ぱらぱら落ちています……」
「この暑さで、消毒はしたほうがよいのでしょうか……」

昨日(10月20日)は、10月下旬とは思えない蒸し暑さでした。とうとうエアコンをつけました。暦の上では霜降が目の前で、本来なら朝晩に上着が要るころです。

前号で、朝のうちにバラを切って飾るご案内をしました。アンジェラが咲きだしたと申し上げた、あの花です。ところが今年は、そのあとに来るはずの「秋らしい涼しさ」が来ていません。気温が下がらない10月は、秋バラにとって良いことがありません。

咲いている花は早く散り、色は浅く、香りは飛びます。そして、ここがいちばん大事なのですが、株が冬の支度を始めません。来春の花は、この10月から11月の過ごし方で決まります。

今号は、「病気を止める・蒸れを切る・水と肥料・つぼみの扱い」の順にご案内します。前号が「楽しむ」話でしたので、今号は「守る」話です。

1.バラにとって、今年の10月はまだ夏です

秋バラが美しいのは、気温が下がるからです。涼しいとつぼみがゆっくり開き、花びらが厚くなり、色が濃く出ます。前号で「秋は香りが深くなる」と申し上げたのも、同じ理屈でした。

その前提が、今年は崩れています。気温が高いままだと、次のことが起きます。

花が早く開き、早く散ります。せっかく上がったつぼみが、二日か三日で開ききってしまいます。色も浅く、香りも薄くなります。これは手入れの失敗ではなく、気温のせいです。
花びらの縁が傷みます。日中の強い日差しと高温で、外側の花びらが先に焼けます。
株が休眠に向かいません。本来、10月の下旬からは根に養分をためて冬に備える時期です。暖かいと、株は「まだ伸びられる」と判断して、やわらかい新しい芽を出します。この芽が、いちばんの困りものです。冬までに固まらないまま霜に当たり、先から枯れ込みます。来春の芽になるはずだった枝を、そこで失います。

ですから、今やることは「応援」ではなく「落ち着かせること」です。肥料を足さず、深く切らず、病気だけは止める。それだけです。

2.この陽気をいちばん喜ぶのは、黒星病です

秋に葉が黒い点を出してぱらぱら落ちるのは、ほとんどが黒星病(黒点病)です。そして、今年の気候は黒星病にとって最高の条件がそろっています。

黒星病は、カビの仲間が起こす病気です。感染には条件があります。一つは水。もう一つは温度です。胞子は水の中でしか発芽できず、葉が6時間から9時間ぬれ続けると感染が成立します。そして増えるのにいちばん都合がよい温度が、20度から25度。まさに今の気温です。

つまり、「気温が高い」+「葉がぬれている時間が長い」がそろうと一気に出ます。秋の長雨、夜露、夕方の水やり。この三つが重なった株が、11月に葉を落とします。

葉を落とすと、何が困るのでしょうか。前号でも申し上げましたが、10月から12月の葉が、来春の最初の花をつくります。秋に葉を落とした株は、春の花が減ります。いま出ている花より、こちらのほうが大事です。

やることは三つです。

一 落ちた葉を、拾って捨てる。これがいちばん効きます。病気の葉は株元の土の上で冬を越し、翌春に跳ね返って再び感染します。堆肥にはしないでください。燃えるごみか、袋に密閉して処分します。枝に残った黒い葉も、手で取ります。
二 水やりは、朝のうちに株元へ。葉に水をかけない。これだけで感染の機会がはっきり減ります。夕方や夜の散水は、いまの時期はいけません。葉が朝までぬれたままになり、ちょうど感染が成立する時間になります。
三 雨の前後に薬剤を。すでに出ている斑点は消えません。薬はまだ健康な葉を守るためにかけます。ですから、雨の降る前と、長雨が上がった直後が勘所です。

薬剤は、同じものを続けて使わないこと。同じ系統ばかり使うと効かなくなります。市販のものでは、サプロール乳剤、ダコニール1000、ベニカXファインスプレーなどがあり、三回に一度は別の系統に替えてください。株元の土にも軽くかけておくと、跳ね上がりを抑えられます。

散布は、朝の涼しいうちに。ここが今年とくに申し上げたいところです。気温が25度を超える日中に薬をかけると、薬害が出ます。葉が焼け、かえって落葉します。昨日のような陽気の日は、昼にかけてはいけません。朝8時までか、日が落ちてから。そして、葉の裏までぬらすこと。表だけでは意味がありません。

3.うどんこ病は、朝晩の冷えと昼の暑さで出ます

もう一つ、この季節に出るのがうどんこ病です。新芽やつぼみ、若い葉に白い粉をふいたようになります。

こちらは黒星病と条件が逆です。うどんこ病は、雨にぬれ続けると流れて落ちます。好むのは乾き気味で、昼と夜の温度差が大きいとき。適温は17度から25度です。

今年の10月は、昼が夏のように暑く、朝晩だけは下がる日があります。この温度差が、うどんこ病をいちばん呼びます。黒星病とうどんこ病が同時に出るのは、そういう年です。

見つけたら、早いうちに。白い粉が出た新芽やつぼみは、まだ数が少ないうちに指で摘み取ってしまうのが確実です。広がってからでは薬も効きにくくなります。

薬を使わずに抑えたい方は、炭酸水素カリウムの薬剤(カリグリーンなど)があります。食品にも使われる成分で、収穫前の野菜にも使えるものです。重曹を水で薄めて使う手もありますが、濃いと葉が傷みます。1リットルに1グラム程度まで。市販品のほうが確実です。

風通しをよくすることが、いちばんの予防です。これは次の項と同じ話になります。

4.蒸れを切る ― 置き方と、風の通り道

病気の話は、結局ここに行き着きます。薬より先に、風を通してください。

鉢は、間隔を空ける。秋は鉢を寄せて置きがちですが、葉が触れ合う距離では風が抜けません。鉢と鉢のあいだを、こぶし一つ分。それだけで変わります。
鉢を、地面から浮かせる。コンクリートやタイルに直接置くと、下から熱が伝わり、鉢底から空気も入りません。レンガやスタンドで少し上げてください。
株元の草を取る。株元に下草や雑草が茂っていると、そこに湿気がこもります。株元から20センチほどは、風が通るようにしておきます。
込んだ枝を、軽く抜く。株の内側に向かって伸びた枝、他の枝と交差している細い枝を、数本だけ元から取ります。ただし、本格的な剪定はしません。深く切ると、また新しい芽が動きます。今は「抜く」だけ、冬に「切る」。これを守ってください。
ツルバラは、触りません。アンジェラのような品種は、伸びた枝が来年の花の土台です。込んでいても、誘引は12月から1月の仕事です。今は我慢します。

5.水は切らさず、肥料は足さない

前号・前々号と同じお願いですが、今年の陽気ではもう一度申し上げます。

肥料は、打ち止めのままで。暑いから、花が小さいから、と肥料を足したくなります。10月以降の窒素肥料は、株を冬に向かわせなくします。やわらかい枝が伸び、霜で枯れ込みます。今年はとくに、暖かさで株が動きやすくなっています。足さないことが手入れです。

水は、むしろ要ります。この気温では、鉢の土は10月とは思えない速さで乾きます。ただし、回数ではなく土を触って決めてください。表面が乾き、指を2センチ入れて乾いていたら、鉢底から流れるまでたっぷりと。少しずつ毎日が、いちばんいけません。

時間は、朝。黒星病の項で申し上げたとおりです。葉にかけず、株元に。

鉢の温度にも気をつけてください。黒いプラスチック鉢は、日が当たると中が40度近くまで上がります。根は30度を超えると傷みます。日中30度近くなる日は、鉢を午後だけ日陰に移すか、鉢をもう一つ外側にかぶせる(二重鉢)と和らぎます。株元に腐葉土やバークチップを3センチほど敷くのも効きます。これは乾燥と地温の両方を抑えます。

ハダニにも、ご注意ください。乾いて暖かい秋は、ハダニが長引きます。葉が白っぽくかすれ、裏に小さな粒が見えたらこれです。見つけたら、葉の裏に水を強めにかける。水に弱い虫ですから、それだけで数を減らせます。ただし、かけるのは朝のうち。夕方にやると黒星病を呼びます。

6.これから上がるつぼみを、どうするか

暖かいので、株はまだつぼみを上げてきます。これを咲かせるかどうか、ここで決めてください。

目安は、その花が11月の中旬までに咲き終わるかです。つぼみが見えてから咲くまで、この気温ならおよそ2週間から3週間かかります。

いま色が見えているつぼみ、膨らんでいるつぼみ 咲かせてください。10月いっぱいから11月上旬の花です。十分に楽しめます。
まだ小さく固いつぼみ、これから出てくる新しい芽の先のつぼみ 摘んでください。咲いても寒さで開ききらず、茶色くなって終わります。そのあいだ、株は花に養分を使い続けます。その養分は、来春の花に回すほうがよいのです。
やわらかい新しい枝(秋のシュート)が伸びてきたら 先を軽く止めます。伸ばしても冬までに固まりません。ただし、ばっさり切ると再び芽が動きますので、先の20センチほどを摘む程度に。

咲き終わった花は、花首の下2センチで切ります。深追いはしません。実(ローズヒップ)は落としてください。残すと種をつくるほうに力が回ります。

11月に入ったら、花がら摘みもやめます。切るたびに芽が動くからです。花びらだけを指で取り、あとは株を休ませます。

7.10月の見回りで、もう一つ見ておくこと

株元を見るついでに、おが屑のような粉が落ちていないかを確かめてください。株元や枝の付け根に、木くずの山があれば、テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が幹の中にいます。

これは、見つけた日に手当てしてください。幹を内側から食われ、翌春に株ごと枯れます。穴を見つけたら、専用の殺虫剤(園芸用のスプレーで、細いノズルのものがあります)を穴に注入し、穴を園芸用の粘土やテープでふさぎます。太い株でも、一年で枯れます。秋の見回りで助かる株が、毎年あります。

あわせて、株元の土が固く締まっていないかも見ておきます。夏の水やりで表面が固まっていることがあります。表面を1センチだけ軽くほぐし、腐葉土を足してください。深く掘ると根を切りますので、表面だけです。

■まとめ

気温が下がらない10月の、バラの守り方。
1.高温で花は早く散り、株は冬支度を始めない。応援せず、落ち着かせる
2.黒星病は20~25度+葉が6~9時間ぬれると感染。落ち葉を拾い、朝に株元へ水を
3.薬は25度を超える日中にかけない。朝8時までか日没後、葉の裏まで。系統は替える
4.うどんこ病は昼夜の温度差で出る。白い芽は早いうちに摘む
5.鉢の間隔はこぶし一つ、株元の草を取り、込んだ枝は抜くだけ。剪定と誘引は冬
6.肥料は足さない。水は土を触って、たっぷり。鉢の温度と二重鉢
7.11月中旬までに咲き終わらないつぼみは摘む。養分を来春へ
8.株元のおが屑はテッポウムシ。見つけた日に手当てを

今年の秋は、こちらの思っているとおりには進んでいません。暦は霜降でも、庭はまだ夏の続きです。こういう年は、手を加えるより、余計なことをしないほうがうまくいきます。

肥料を足さない。深く切らない。葉を落とさせない。この三つだけで、来春の花は守れます。咲いている花は、前号のとおり朝のうちに切って、どうぞ部屋で楽しんでください。

涼しくなるのを待っているのは、私たちだけではありません。バラも待っています。

本のご案内

10月にエアコンをつける年です。暑さから植物を守る手立ては、もう夏だけのものではなくなりました。高温と蒸れへの備えを、植物ごとにまとめた一冊です。

書名:園芸植物と共に夏を生きる ― ガーデナーのための夏越しテクニック
著者:並木順子
フォーマット:Kindle電子書籍

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発行日2026年(令和8年) 10月22日
発行元ガーデニングの裏技
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