夏に切ったバラが、もうつぼみです ― 秋バラを咲かせきる、最後の10日の手入れ

2026年




メールマガジン「お花大好き」
第1162号 2026年10月8日


夏に切ったバラが、もうつぼみです ― 秋バラを咲かせきる、最後の10日の手入れ

「つぼみは上がったのですが、数がとても少ないのです……」
「毎年、つぼみのまま茶色くなって、開かずに終わってしまいます……」
「この時期、肥料と薬はどうすればよいのでしょうか……」

前号では、秋植え球根を今のうちに買っておくようご案内しました。その球根を涼しい日陰で寝かせているあいだ、庭の主役はバラに移ります。

第1156号で、秋バラの夏剪定をご案内しました。「咲かせたい日から50日を引いて、切る日を決めてください」と申し上げたあの作業です。9月の頭に切られた方は、ちょうど今、枝の先に小さなつぼみが見えているころだと思います。満開まで、残り10日から2週間。ここからの手入れは、8月末の剪定とはまるで性質が違います。

我が家でも、クイーンエリザベスとアンジェラにつぼみが上がりました。数は多くありません。けれども、少ないのは失敗ではないのです。その理由も、今号で申し上げます。

今号は、「止めるもの・切らさないもの・減らすもの・守るもの」の順にご案内します。夏剪定が「切る」仕事だったのに対し、ここからは手を出しすぎないことが仕事になります。

1.つぼみが見えたら、肥料は打ち止めです

いちばん多い失敗が、ここです。つぼみが上がると、つい応援したくなって肥料を足してしまいます。その肥料は、秋の花には間に合いません。

今つぼみになっている花の分は、9月に施した肥料と、夏に残した葉がつくった養分で、すでに出来上がっています。ここで足した肥料が効いてくるのは、花が終わったあとです。つまり、効くころには花がない。

それだけなら無駄で済みますが、害もあります。10月以降の窒素肥料は、株を冬に向かわせなくします。やわらかい新しい枝が伸び、その枝が冬までに充実しないまま霜に当たり、先から枯れ込みます。来春の芽になるはずだった枝が、そこで失われるのです。

庭植え 追肥はもう要りません。9月に施したもので十分です。
鉢植えで液肥を続けている方 つぼみに色が見えたら止めてください。
どうしても何か施したい方 窒素の少ない、リン酸とカリの多いものを、ごく少量だけ。株を締める方向の肥料です。

バラは今、あなたが手を止めているあいだに花を仕上げています。第1156号の最後に申し上げたことと、同じお願いです。

2.水だけは、切らさないでください

肥料は止めますが、水は別です。つぼみが膨らむ時期のバラは、一年でもよく水を欲しがります。花びらは水でできています。

「つぼみが上がったのに、咲いたら花が小さかった」「つぼみがぽろりと落ちた」。この二つは、たいてい水切れです。しかも、夏のようにぐったりしてくれないので気づきません。葉が元気なまま、花だけが小さくなります。

ただし、夏と同じ回数でやってはいけません。ここが秋の難しいところです。気温が下がって蒸発が減り、株の水の使い方も落ちています。夏の習慣で朝晩やり続けると、鉢の中が常に湿った状態になり、根が傷みます。根が傷めば、やはり花は小さくなります。

回数ではなく、土を触って決めてください。鉢土の表面が乾き、指を2センチほど入れて乾いていたら、鉢底から流れ出るまでたっぷりと。乾いたら、たっぷり。これだけです。少しずつ毎日やるのが、いちばんいけません。表面だけが湿って、根の先には届きません。

庭植えは、よほど雨がなければ放っておいてかまいません。1週間以上まったく降らないときだけ、株元にゆっくりと時間をかけて与えます。

3.減らすと、大きく咲きます ― 摘蕾(てきらい)

つぼみを減らす、という話をします。もったいないようですが、品種によっては、ここで花の大きさが決まります。

バラの枝先には、たいてい真ん中にひとつ大きなつぼみができ、そのすぐ下に小さなつぼみがいくつか並びます。真ん中が主蕾(しゅらい)、周りが脇蕾(わきらい)です。

ハイブリッドティー(大輪)は、脇蕾を取ります。真ん中の大きなつぼみをひとつだけ残し、下の小さなつぼみは、まだ豆粒くらいのうちに指でつまんで落とします。1本の枝に1輪。これで、その品種本来の大きさと花形になります。クイーンエリザベスのように枝が高く伸びて房になりやすい株も、数を減らしたほうが、一輪一輪が整います。早いうちにやることが肝心です。つぼみが膨らんでから落としても、残った花はもう大きくなりません。

フロリバンダ(中輪房咲き)は、基本的に触りません。房で咲く姿が身上です。どうしても開花をそろえたいときは、先に咲いてしまう中心のつぼみを落とす方法もありますが、初めての方は何もしないほうが失敗しません。

小輪の房咲き・ツルバラ・シュラブは、摘みません。アンジェラのように小さな花が房で集まって咲く品種は、数が景色をつくります。一輪の大きさを競う花ではありません。

ミニバラも、摘みません。全体の数で見せます。

4.薬は、色がつく前に。それ以降はかけません

秋の長雨は、黒星病がいちばん広がる条件です。葉を落とすと、来春の芽にまで影響が出ます。

ただし、つぼみに色が見えてからの薬剤散布は避けてください。花びらにシミが出ます。せっかくの秋の花が、茶色い点々で台無しになります。

予防をするなら、今週が最後のかけどきです。開花の10日前まで。それを過ぎたら、薬は葉だけをねらい、つぼみと花にはかからないように。あるいは、もうやめて花を楽しむと決めてしまってもよいと思います。

薬を使わずにできることも、二つあります。
落ちた葉を拾うこと。黒星病は、地面の病葉から雨のしぶきで跳ね上がって感染します。拾って捨てるだけで、はっきり減ります。
夜、見回ること。この時期、つぼみと花を食べる虫がいます。ホソオビアシブトクチバという蛾の幼虫で、シャクトリムシのような姿をしており、昼は枝に化けて動きません。夜に活動します。つぼみに穴が開いていたら、これです。懐中電灯を持って、枝を順に見てください。見つけて取るのが、いちばん確実です。

花びらの縁だけが茶色く汚れるのはアザミウマ(スリップス)です。小さすぎて目に見えません。咲いた花を早めに切ってしまうのが、次の花を守る方法になります。

5.雨が、つぼみを玉にします

「つぼみのまま茶色くなって開かない」というお悩みは、多くの場合これです。ボーリングと呼ばれる現象です。

開きかけたつぼみが雨に濡れ、外側の花びらが貼りついたまま乾いて固まってしまう。中では花が開こうとしているのに、外が開かない。そのまま茶色く傷んで終わります。花びらの数が多い品種、白や淡いピンクの品種に、とくに起こりやすいです。

鉢植えは、雨の予報が出たら軒下へ。これがいちばん効きます。秋は台風も来ます。背の高い株は倒れますので、あわせて避難させてください(第1154号をご参照ください)。
庭植えで玉になってしまったら、貼りついた外側の花びらを、指で1枚か2枚、そっと剥いてやります。中の花びらが息をつけば、そこから開くことがあります。
雨上がりに、株を揺すって水を落とす。花に溜まった水を抜いておくだけで、傷みが減ります。

もうひとつ、秋は日当たりが夏と変わります。太陽が低くなり、夏には日が当たっていた場所に、建物や木の影が伸びてきます。鉢は、今の季節の日なたへ動かしてください。日照が足りないと、花色が浅くなります。

6.つぼみが少ないのは、失敗ではありません

さて、冒頭のお悩みです。

秋バラは、春の半分から3分の1しか咲きません。これが普通です。春は冬のあいだに蓄えた力で一斉に咲きますが、秋は夏の暑さを越えてきた株が、残った力で咲かせています。しかも大輪種は摘蕾して1枝1輪にしますから、数はいよいよ減ります。

そのかわり、気温の下がった秋の花は、ゆっくり時間をかけて開きます。花びらが厚く、色が濃く、香りが深い。秋バラは、数ではなく一輪を見る花です。数が少ないことを嘆くより、その一輪が咲くまでの10日を守ってください。

もうひとつ、ブラインドという状態があります。剪定後に芽は伸びたのに、つぼみにならず葉だけで止まってしまった枝のことです。夏の日照不足、株の体力不足、剪定が深すぎたことなどで起こります。見つけても、今は切らないでください。この時期に切り戻しても、花には間に合いません。葉をつけたまま残し、光合成をさせて株の力に変えるほうが、来春のためになります。

葉を落としてしまって夏剪定を見送った株も、同じです。今年の花はあきらめ、葉を増やす。それが正解でした。

7.咲いたあとの、浅い花がら切り

咲いたら、ぜひ切って室内へどうぞ。切るのは朝のうちです。気温が上がる前の花が、いちばん水を含んで、いちばん香ります。

株に残した花が終わったら、花がらを切ります。ただし秋は、浅く切ってください。春や初夏のように5枚葉まで下げて切り戻すと、株は「次を咲かせる」ほうへ動きます。この時期に伸びた枝は、冬までに充実しません。

10月中の花がら切り 花首の下、2センチほどのところで。
11月に入ったら 花びらだけを摘み、枝は切りません。株を休ませる方向へ切り替えます。
実(ローズヒップ)は、落とします。残すと種をつくるほうに力が回ります。実を観賞したい品種だけ、残してください。

葉は、できるだけ長く残します。11月から12月の葉が、来春の最初の花をつくります。

■まとめ

秋バラの、最後の10日。要点をまとめます。
1.つぼみが見えたら肥料は打ち止め。10月の窒素は、冬に枝を枯らす
2.水は切らさない。ただし回数ではなく、土を触って決める
3.大輪は脇蕾を早めに摘んで1枝1輪に。房咲き・ツルバラ・ミニバラは摘まない
4.薬は開花10日前まで。色づいたらかけない。落ち葉を拾い、夜に虫を見回る
5.雨の前に鉢を軒下へ。玉になったつぼみは外側の花びらを1枚剥く

夏剪定が「切って、仕掛ける」仕事だったのに対し、この10日は「余計なことをしない」仕事です。肥料をやめ、薬をやめ、つぼみを減らし、ただ水と日当たりだけを守る。あとは、待つ。

50日前に切った一手が、形になって現れます。我が家のクイーンエリザベスとアンジェラも、あと10日ほどでしょうか。数は少なくとも、秋の一輪は春の十輪に負けません。どうぞ、その日を楽しみにお待ちください。

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発行日2026年(令和8年) 10月8日
発行元ガーデニングの裏技
発行人並木順子
  
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