メールマガジン「お花大好き」 |
まだ買わないでください ― パンジー・ビオラ、9月の苗が春までもたない理由
「もう店に並んでいました。早いほうがよく咲くのでしょうか……」
「毎年買っているのに、年が明けるころには形が崩れてしまいます……」
「花がたくさん咲いている株を選んだのに、すぐ寂しくなりました……」
1.パンジー・ビオラは、涼しさで育つ花です
この二つは、生育に向く温度が15度から20度あたりの、涼しい季節の草花です。暑さには強くありません。25度を超える日が続くと生育が乱れ、茎だけがひょろひょろと伸びます。
ですから9月に植えると、こうなります。徒長します。残暑のなかで節と節の間が伸び、株が締まらないまま大きくなります。間延びした姿は、あとから直りません。
根が張る前に、株が消耗します。咲き続けるには体力が要ります。根が十分に広がらないうちに花ばかり咲かせると、そこで力を使い切ってしまいます。
病気が出ます。高温と多湿が重なる時期は、株元が傷む立枯れや、花が溶けるように傷む灰色かび病が出やすくなります。 そして年明けの姿がいちばん違います。秋にゆっくり根を張った株は、2月から3月に株が横へ広がり、こぼれるように咲きます。早植えで秋に伸びてしまった株は、その時期に真ん中が空いて、茎が寝てしまうのです。 では、なぜ9月から並ぶのか。売り場が早く立ち上がるからです。生産者はハウスで早出しの苗を仕上げ、店は秋の棚をいち早く作ります。並んでいる時期が、植えてよい時期とは限らないということです。
2.買うのは、いつがよいのか
目安は日付ではなく、最高気温が25度を下回って落ち着いたころ。そして霜が降りはじめる1か月ほど前までに植え終わることです。この二つの間が、根を張らせる時間になります。
地域ごとの、おおよその見当です。寒冷地(北海道・東北北部・高冷地) 9月下旬から10月上旬。霜が早いので、ここは早植えが正解です。今並んでいる苗を買ってよい地域です。
温暖地(関東から関西の平地) 10月中旬から11月上旬。9月に買う必要はまったくありません。
暖地(九州・四国の平地、南関東の海沿い) 11月に入ってからでも十分間に合います。 なお、苗は遅く買うほど選べる品種が減ります。「早く買う」のではなく「良い時期に、良い株を選ぶ」。9月のうちは売り場を下見して、品種名と値段を覚えておく期間だとお考えください。
3.良い苗の見分け方 ― 満開の株を選ばない
売り場でいちばんやってしまうのが、花がたくさん咲いている株を選ぶことです。花は買ったその日の見栄えであって、株の力ではありません。選ぶ順番は、次のとおりです。
花は1輪か2輪、つぼみが多い株を選ぶ。これから咲く力が残っています。満開の株は、すでに花に体力を回しています。節間が詰まり、葉が株の中心からぎっしり出ている。背が低く、こんもりしている株が良い株です。茎が伸びてポットの縁から横に倒れているものは、徒長苗です。
葉の色は、濃すぎず淡すぎず。下葉が黄色い、黒い斑点がある、しおれた跡があるものは避けます。
株元がぐらつかない。指で軽く触れて、茎ががっしり立っているか確かめます。
ポットの底から、白い根が少し見える。これは良い状態です。茶色い根がぐるぐる巻いて土が硬く縮んでいるものは、置かれすぎた苗です。
葉裏と新芽をのぞく。アブラムシ、葉に白い迷路のような線(ハモグリバエ)、かじられた跡がないか。
品種名のラベルがある株を選ぶ。咲き方や草丈の性質が分かるので、あとの管理が楽になります。 パンジーとビオラの選び分けも、ひとことだけ。パンジーは大きな花が少しずつ、ビオラは小さな花がたくさん。寒さや雨に強く、春に大きく広がって長く咲くのはビオラのほうです。冬から春まで手間をかけずに咲かせたいお宅には、ビオラをおすすめします。
4.植えつけは、浅植えと株間がすべて
苗が良くても、植え方でだいなしになります。要点は四つです。
土は水はけ第一。鉢なら市販の草花用培養土。地植えは腐葉土を混ぜて、水がたまらないようにします。酸性の強い土を嫌うので、長く花を植えていない場所なら苦土石灰を少量まいて2週間ほど置いてから植えます。元肥は緩効性肥料を。春まで半年咲き続ける花です。植えつけのときに緩効性肥料を土に混ぜておきます。
浅植えにする。株の中心(葉が出てくる付け根)を土に埋めてはいけません。ポットの土の表面と、植え場所の土の高さをそろえます。深植えは株元が腐る原因の第一位です。
株間を広くとる。ここが最大のこつです。20センチから25センチ。植えた日は寂しく見えますが、春にはビオラ1株で直径30センチを超えます。詰めて植えた花壇は、春に蒸れて中から傷みます。プランターなら65センチに3株までです。 根が固く回っていたら、底を軽くほぐしてから植えます。植えたあとは、鉢底から流れ出るまでたっぷり水をやってください。
5.春まで咲かせる、たった三つの作業
花がら摘み。これがいちばん効きます。咲き終わった花は、花びらをちぎるのではなく、花茎の付け根から摘み取ること。茎を残すと、そこに種ができ、株は「もう咲かなくてよい」と判断して花を止めます。週に2回、気づいたときに摘むだけで、咲く期間が目に見えて延びます。
追肥。半年咲く花は、半年ぶんの肥料を要求します。液体肥料なら10日から2週間に1回、置き肥なら月に1回。ただし真冬に生育が止まっているあいだは控えめにし、2月下旬から再開して春の盛りに備えます。 日に当てる。冬のパンジー・ビオラは、霜には案外強く、日照不足にはとても弱いです。寒さを心配して軒下の奥に入れると、花数が減ります。冬でも、半日は日が当たる場所へ。水やりは晴れた日の午前中に。夕方にやると、夜に凍って根を傷めます。 そのうえで、年明けに株が間延びしてきたら、伸びた枝を思いきって軽く切り戻してください。2月に切った株は、3月から4月にこんもり茂って咲き直します。■まとめ
パンジー・ビオラ、要点をまとめます。
1.涼しさで育つ花。9月の高温で植えると徒長し、春に形が崩れる2.買い時は最高気温が25度を下回ってから。温暖地は10月中旬から11月上旬
3.満開の株を選ばない。つぼみが多く、背が低く、節間の詰まった株
4.浅植えにして、株間は20センチから25センチ。詰めると春に蒸れる
5.花がらを付け根から摘む、追肥を切らさない、冬も日に当てる 売り場に苗が出ると、つい手が伸びます。けれども、この花のいちばん美しい姿は、来年の春に来ます。いま買うのを一か月こらえた株が、その春にいちばん大きく広がります。今月は下見の月だとお考えください。
本のご案内
パンジーとビオラは、冬から春の庭で、バラの株元を受け持つ最良の脇役です。主役の足元に何を植えるかで庭の印象は決まります。その組み合わせを一年ぶんまとめた一冊です。
書名:バラに合う植物: 一年中美しい庭をつくる、脇役の設計図
著者:並木順子
フォーマット:Kindle電子書籍
Kindle Unlimitedで追加料金なしで読めます。
Amazonでのお買い求め・お試し読みは、下記のリンクからどうぞ。
| メールマガジン「お花大好き」 第1160号 | |
| 発行日 | 2026年(令和8年) 9月24日 |
| 発行元 | ガーデニングの裏技 |
| 発行人 | 並木順子 |
| バックアップサイト | 過去記事はこちら |
メルマガ詳細 |