台風が来る前の3時間で庭は守れる ― 強風・塩害から鉢とバラを救う実践手順

2026年




メールマガジン「お花大好き」
第1154号 2026年8月13日


台風が来る前の3時間で庭は守れる ― 強風・塩害から鉢とバラを救う実践手順

「台風が近づくたび、どの鉢を家に入れるべきか迷ってしまう……」
「大きな鉢は動かせないし、バラのアーチはどうすればいいの……」
「通り過ぎたあと、雨も降ったのに葉が茶色くなって枯れてしまった……」

前号では立秋にちなんで秋の七草を取り上げ、いまから苗を確保して秋の庭を用意する算段をご案内しました。ところが、そうして整えた庭をひと晩で台無しにしてしまうものがあります。台風です。お盆を過ぎると太平洋高気圧が東へ後退し、台風は高気圧の縁を回って本州へ向かいやすくなります。8月下旬から9月にかけてが、いよいよ本番。今号は、接近が分かってからの直前3時間で何をどの順番で片づけるか、そして見落とされがちな塩害への手当てと通過後の復旧までを、実践的にご案内します。

1.庭を壊すのは、風だけではありません

台風が庭に及ぼす力は、大きく三つに分けられます。

ひとつめは風圧。ここでぜひ覚えていただきたいのは、風が物を押す力は、風速の2乗に比例するということです。風速が10m/sから20m/sへ倍になれば力は4倍、30m/sなら9倍。「去年の台風は平気だったから」という経験則が、あっさり裏切られる理由がここにあります。気象庁の目安では、20m/sから25m/sで細い木の幹が折れはじめ、30m/sを超えると樹木が根こそぎ倒れることがあるとされています。

ふたつめは飛来物。空の鉢、名札、支柱の余り、ジョウロ、すのこ。ふだんは何でもないものが、風に乗れば窓や車を割る凶器になります。ご自分の庭を守るだけでなく、ご近所に迷惑をかけないための備えでもあります。

そして三つめが、いちばん忘れられがちな。海のしぶきが風に巻き上げられ、内陸まで運ばれてきます。これについては、あとで章を改めてお話ししますね。

2.直前3時間、この順番で動きます

進路予報が出てから慌てないよう、優先順位を決めておきましょう。時間がないときほど、順番が効きます。

最初の1時間 ― 飛ぶものを、ひとつ残らずなくす
軽い鉢、ハンギングバスケット、名札、支柱の余り、スコップ、ジョウロ、椅子、すのこ、空の鉢。これらを家の中か、風下側の壁際へ集めます。鉢の受け皿も外してください。水がたまって鉢が浮き、かえって倒れやすくなります。

次の1時間 ― 動かせない鉢は、自分から寝かせる
背の高い鉢は、倒れるのを待つのではなく、こちらから横倒しにしておきます。自然に倒れれば枝が折れ、鉢も割れますが、こちらで倒せば向きを選べます。そして鉢どうしを寄せて固めること。一本ずつ立っているより、寄せ集めたほうがはるかに強いのです。建物の壁際や室外機の陰など、風の当たらない場所へ寄せましょう。

最後の1時間 ― 支柱と誘引を締め直す
支柱がぐらついていないか、地面に十分深く刺さっているかを確かめます。麻ひもは雨に濡れると緩み、古いものは切れます。要所だけでもビニールタイや麻ひもの新しいものに替えておくと安心です。

3.バラとつる植物は「面」で風を受けます

いちばん被害が大きいのが、つるバラのアーチやフェンス仕立て、クレマチス、ツルニチニチソウなどのつる植物です。葉と枝が壁のように広がっているため、風をで受け止めてしまいます。支柱ごと引き抜かれたり、フェンスごと倒れたりするのはこのためです。

対策は受ける面積を減らすこと。長く伸びたつるは何本かずつ束ねてひとまとめにし、支柱やフェンスに沿わせて縛ります。ばらばらに広げておくより、束ねたほうが風を逃がします。

今年伸びたベーサルシュートは、まだ組織が柔らかく、つけ根からポキリと折れやすいところ。支柱を添えて、八の字にゆるく結んで支えておきましょう。きつく縛ると、そこが傷んで折れます。

ここでひとつご注意を。台風対策のために大きく剪定するのは避けてください。秋バラのための夏剪定は8月下旬から9月上旬が適期で、早すぎると開花期がずれてしまいます。伸びすぎた枝先を軽く整理する程度にとどめ、本格的な剪定は時期を守るのが正解です。鉢植えのバラは、剪定より寝かせるほうが確実ですよ。

4.見えない敵、塩害 ― 勝負は通過後24時間

台風が過ぎて青空が広がり、ほっとした2、3日後。葉の縁から茶色く枯れこんでくることがあります。しかも風上を向いていた側の葉だけが傷んでいる。これが潮風害、いわゆる塩害です。

海のしぶきが強風で巻き上げられ、条件しだいで海岸から数キロ、ときには数十キロ内陸まで運ばれます。「うちは海から遠いから」と油断できないのはこのためです。

以前に、海から10キロ以上も離れているのに、アサガオが全滅してしまったことがあります。

やっかいなのは、雨が少ないときほどひどくなるという点。雨をたっぷり伴えば塩は洗い流されますが、台風が足早に抜けたあとの吹き返しの風や、通過後に晴れて乾いてしまう場合には、葉の表面で塩分がどんどん濃縮します。すると葉から水分が奪われ、枯れこんでいくのです。

手当ては、いたって単純です。雨が上がったら、真水で葉の表と裏を洗い流す。ホースのシャワーで十分ですから、できればその日のうちに、遅くとも24時間以内に。日中の暑い時間を避け、朝か夕方に行ってください。葉の裏側は忘れられがちですが、こちらにも塩はついています。株元の土にも塩は落ちていますので、あわせてたっぷりと潅水して洗い流しておきましょう。

5.通過後の復旧 ― あわてて切らない、あわててやらない

風がおさまったら、次の手順で見て回ります。

根が浮いた株は、そのままにすると乾いて枯れます。株元を踏んで固め直し、支柱を添えて動かないようにします
折れた枝は、裂けたまま放置すると傷口から病気が入ります。清潔なはさみで、健全な部分まで切り直しましょう
傷んだ葉を、いっぺんにむしらないこと。見た目は悪くても、残った葉が株を回復させる力になります。明らかに枯れた部分だけにとどめます
病気の予防を忘れずに。強い風雨のあとは葉に細かい傷がつき、黒星病やうどんこ病が広がりやすくなります。晴れ間を見て殺菌剤を散布しておくと安心です
肥料は、すぐに与えません。弱った根は肥料を吸えず、かえって傷みます。1週間ほど様子を見て、まずは活力剤程度から始めてください

倒れた鉢を起こしたとき、根鉢が動いて土が減っていたら、新しい土を足しておきます。根が空気に触れたままにならないよう、そこだけは早めに。

■まとめ

台風から庭を守るこつを、5つにまとめます。

1.風の力は風速の2乗に比例する。20m/sは10m/sの4倍、30m/sなら9倍
2.直前3時間は「飛ぶものをなくす→鉢を寝かせて寄せる→支柱と誘引を締める」の順
3.つる植物とアーチは面で風を受ける。枝を束ねて受ける面積を減らす
4.塩害の勝負は通過後24時間。雨が上がったら真水で葉の表と裏を洗い流す
5.あとはあわてない。葉をむしらず、肥料もやらず、支えの復旧と傷口の手当てを先に

この夏の台風シーズン、あなたの庭でいちばん心配なのは、どの鉢でしょうか。

新刊案内

台風も猛暑も、植物にとっては同じ夏の試練です。この季節を植物と一緒に乗り切るための一冊をどうぞ。夏越しのコツをまとめました。

書名:園芸植物と共に夏を生きる ― ガーデナーのための夏越しテクニック
著者:並木順子
フォーマット:Kindle電子書籍

Kindle Unlimitedで追加料金なしで読めます。
Amazonでのお買い求め・お試し読みは、下記のリンクからどうぞ。

園芸植物と共に夏を生きる ― ガーデナーのための夏越しテクニック(Amazonで見る)














メールマガジン「お花大好き」 第1154号
 
発行日2026年(令和8年) 8月13日
発行元ガーデニングの裏技
発行人並木順子
  
バックアップサイト過去記事はこちら
 

メルマガ詳細

園芸植物と共に夏を生きる - ガーデナーのための夏越しテクニック

関連記事

特集記事

最近の記事

  1. 台風が来る前の3時間で庭は守れる ― 強風・塩害から鉢とバラを救う実践手順

  2. 暦の上では、もう秋 ― 秋の七草を庭で育てて、猛暑の先を楽しむ

  3. お花の写真のカレンダー2026年8月号

TOP