50日後に咲かせる ― 秋バラの夏剪定、切る位置と残す葉

2026年




メールマガジン「お花大好き」
第1156号 2026年8月27日


50日後に咲かせる ― 秋バラの夏剪定、切る位置と残す葉

「秋バラの剪定と言われても、どこまで切ってよいのか分かりません……」
「切ったら切ったで、咲いたのは11月も終わりごろ。寒さで開ききりませんでした……」
「葉が黒星病で半分落ちています。この株を切ってしまって大丈夫でしょうか……」

前号では、お盆明けの庭を立て直す5つの工程をご案内し、バラの夏剪定については「本番は適期を待ってください」と申し上げて終わりました。その適期が、いよいよ目の前です。

夏剪定は、一年のうちでもっとも日付が効いてくる作業です。バラは剪定してから花が咲くまで、おおよそ45日から55日かかります。つまり、いつ切るかで、いつ咲くかがほぼ決まってしまう。10月下旬の、いちばん気候のよいころに満開を持ってきたいのなら、逆算して9月の頭には切り終えていなければなりません。

今号は、その夏剪定を「いつ・どこを・どれだけ」の順にご案内します。

1.なぜ、わざわざ切るのか

「せっかく咲きそうなつぼみを、なぜ落とすのですか」とお思いになるかもしれません。夏剪定には、三つのねらいがあります。

ひとつめは、開花時期をそろえること。放っておくと、枝ごとにばらばらに咲きます。一度そろえて切ることで、株全体が一斉に花芽をつくり、10月下旬に満開が来ます。バラ園の秋の景色は、この作業の上に成り立っています。

ふたつめは、花の質を上げること。夏に無理やり咲いた花は、色が浅く、花びらの数も減り、香りも乗りません。夏の花を早めに止めて株に力をためさせると、秋には本来の色と香りが戻ります。秋バラが春より濃く、香り高いと言われるのは、気温だけの話ではないのです。

みっつめは、枝を整理すること。夏のあいだに伸びた細い枝、内側へ向かった枝、黒星病で葉を落とした枝。これらを抜いて風を通しておくと、秋の病気がはっきり減ります。

2.いつ切るか ― 逆算だけが頼りです

適期は、お住まいの地域で変わります。目安は次のとおりです。

寒冷地(東北・北海道・高冷地) 8月下旬
中間地・暖地(関東以西の平地) 9月上旬
暖地の中でも特に暖かい地域 9月中旬まで

早すぎると、まだ暑いさなかに新芽が伸び、その芽が焼けたり、花が9月中に咲いて秋の盛りに何も残らなかったりします。遅すぎれば、つぼみが上がったころに寒さが来て、開ききらないまま終わります。「切ったのに11月末にしか咲かなかった」という場合は、たいてい遅れが原因です。

つまり、カレンダーで決めてください。咲かせたい日から50日を引く。それだけです。ご自宅の庭で去年うまくいった日付があれば、それがいちばん確かな目安になります。

なお、作業は朝の涼しい時間に。日中の高温時に切ると、切り口から株が消耗します。

3.切る前に ― 切ってはいけない株を見分ける

ここが、いちばん申し上げたいところです。夏剪定は、体力のある株にだけ行う作業です。

葉の大半を落としてしまった株、鉢が根詰まりで水を吸えていない株、真夏に植えたばかりの新苗。こうした株を勢いよく切ると、光合成をする葉がなくなり、そのまま枯れ込むことがあります。弱った株は、夏剪定を見送ってください。今年の秋の花はあきらめ、葉を増やして株を戻すほうが、来春のためになります。

黒星病で下葉を落としている株も同じです。まず病葉を拾い集め、落ちた葉を残さないこと。残った葉が少ないなら、剪定は枯れ枝と細枝の整理だけにとどめます。

体力のある株は、剪定の1週間ほど前に緩効性の肥料を株元に施しておくと、切ったあとの芽の伸びが違います。肥料は必ず水やりのあとに、株元から少し離して置きます。

4.どこを、どれだけ切るか

量は、全体の3分の1から4分の1。春の冬剪定のように半分まで下げることはしません。夏剪定は「浅く」が原則です。深く切りすぎると、秋までに枝を伸ばしきれず、花が上がらないまま終わります。

切る位置は、外向きの芽の5ミリほど上。葉のつけ根には芽がひそんでいます。株の外側を向いた芽の上で切ると、新しい枝が外へ伸び、株の中に風が通ります。内向きの芽の上で切ると、枝が中で交差して蒸れのもとになります。

残す枝の太さは、鉛筆くらいから。それより細い枝の先には、よい花はつきません。細い枝、内側へ向かう枝、枯れ枝、下向きの枝は、つけ根から抜きます。

葉は必ず残してください。切り下げた位置から下に、葉が数枚は残るようにします。丸坊主にすると株が光合成できません。この時期の剪定は、葉を残すことが最優先です。

つぼみと咲いている花は落とします。もったいなく感じますが、ここで株に実をつけさせないことが、秋の花数につながります。

樹形別の目安も書いておきます。
ハイブリッドティー(大輪) 枝の3分の1を下げ、太い枝を主体に残します。
フロリバンダ(中輪房咲き) 浅めに、株全体を丸く整える気持ちで。
イングリッシュローズ・シュラブ 自然な樹形を崩さないよう、飛び出した枝を戻す程度に。
ミニバラ 全体を軽く刈り込むように、3分の1ほど。
四季咲きのツルバラ 夏剪定は行いません。誘引した枝はそのままに、細枝の整理と花がら切りだけにします。一季咲きのツルバラも同じく不要です。

5.切ったあとの2週間が勝負です

剪定は、切って終わりではありません。切ったあとの管理で、花の数が変わります。

水を切らさないこと。葉が減ったぶん株の蒸散は落ちますが、新芽を伸ばすには水が要ります。鉢バラは朝にたっぷりと。水が土に入っていかない鉢は、前号でご案内したとおり、バケツに沈めて気泡が止まるまで吸わせてください。

肥料は剪定と同時か、その直前に。切ってから慌てて施しても、芽の伸びには間に合いません。液肥を足すなら、規定より薄めて回数を増やすのが、暑さの残る時期の要領です。

薬剤散布を。切り口と新芽は、病害虫のねらい目です。黒星病とうどんこ病の予防、そしてハダニ。ハダニには薬より葉裏への水が効きます。同じ系統の薬を続けて使わないことも、あわせて申し上げておきます。

新芽が動きだしたら、日当たりへ。剪定直後の数日だけ西日を避けられれば十分です。そのあとは、しっかり日に当てたほうが充実した枝になります。

9月に入って芽が伸び始めると、株の姿はいったん寂しくなります。そこで不安になって追加で切らないことです。バラは、あなたが手を止めているあいだに、静かにつぼみをつくっています。

■まとめ

秋バラの夏剪定、要点をまとめます。

1.咲かせたい日から50日を引いて、切る日を決める。暖地は9月上旬、寒冷地は8月下旬
2.葉を落とした株、根詰まりの株、新苗は夏剪定を見送る
3.切る量は全体の3分の1から4分の1まで。冬剪定のように深く切らない
4.外向きの芽の5ミリ上で切り、鉛筆より細い枝は抜く。葉は必ず残す
5.肥料は剪定と同時か直前に。切ったあとは水と薬剤散布、そして待つこと

今日から数えて、あなたの庭のバラを咲かせたい日はいつでしょうか。カレンダーに丸をつけて、そこから50日をさかのぼる。秋バラの支度は、その一手から始まります。

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発行日2026年(令和8年) 8月27日
発行元ガーデニングの裏技
発行人並木順子
  
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